ロマン派と象徴派の画家たち 3
キリコ (ジョルジョ・デ・キリコ 1888-1978 イタリア)
街の神秘と不安(1914年 油彩)
キリコは、自ら形而上絵画と称した。そして、その時、彼は形而上絵画の創始者となった。
キリコがシュルレアリスムに影響を及ぼしたことは周知の事実であり、ダリの初期の作品を観ても、キリコの影が色濃く漂っている。
そもそも形而上とは、時間と空間の概念を越えた超自然的な観念の世界ものであり、形而下の現実では形を成さないものをいう。
キリコは、形を成しえないものを絵画や彫刻という形によって表現しようとした。それは、象徴としての絵画・彫刻であり、キリコもまた象徴派の一人に数えられる所以でもある。
ところで、キリコは『街の神秘と不安』で何を表現しようとしたのだろうか。
白亜の建造物にまぶしいくらいに照りつける光、広場に通じるであろう道にも同じく強い光が立ち込める。
その光のせいか、建物の裏側は薄暗さが増す。空は青いが、白亜の建造物を照らす光とは裏腹に薄暗く光の存在感はない。
輪回しで無邪気に遊ぶ少女は逆光の中で描かれる。その表情は見えない。おそらく、輪を回し続けることに夢中で、その先に忍び寄る戦争の影は見えていないのだろう。
1914年、第一次世界大戦の勃発したこの年、イタリアではファシズムが少女の先に忍び寄る影の如く芽吹きはじめる。
果たして、少女はこのまま広場にたどり着き、そして無事に家路へとたどることができるのだろうか。
私がキリコの作品の中で、最も惹かれるのはこの絵である。輪回しの少女とその先に待ち構える影が、何とも言えない漠とした不安を醸し出す。
それは、そこに「無邪気な生」と手をこまねいて待つ「悲惨な死」が、一つの絵に封印されているからに他ならない。
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